かき揚げの悲劇
夜8時を過ぎた、あるスーパーでの出来事です。
だんだんお客さんも少なくなりつつあるとはいえ、会社帰りのサラリーマンがお腹をすかせてお弁当売り場をウロウロしています。
「いらっしゃいませー! 50%引きですよー! どうぞどうぞ!」
お総菜コーナーにおいて、おばちゃん(白衣の店員)がまわりのお客さんに声をかけながら、お総菜に値引きのシールを貼りはじめました。
しめしめ……。いあわせた私はこのスーパーではこのくらいの時間になれば、50%引きになることは知っていました。
もちろん、20、30%引きになるのも熟知しています。だから10%引きには興味はないのです(断言)。
この日は50%引き狙いです。ちょっと早くスーパーに着いてしまい、わずか数十円しか値引きにならないのに、買う気もないほかのコーナーにまわりました。
熟考してなにかを買うような素振りをしながら時間をつぶします。そして、50%引きになるのを待ったのです。おばちゃんの声が高らかに響きました。
「はーい、50%引きですよ!」
駆けつける私。そのときです。
「ヘクシッ!」
なんと、おばちゃんがならべていたかき揚げに向かって、くしゃみをしてしまったのです。
しかも、お客さんに声をかけるために、いつもしているマスクをたまたまはずしたその瞬間に……。