ガードマンはいつもひとり
もうずっとむかしのお話です。当時、私はある百貨店で夜間常駐警備のアルバイトをしていました。
電気が消えた店内を懐中電灯を持って、3人組(だったかな)で「おまえはA階段、おまえはB階段」というように、一定の時間ごとに手分けして巡回するのです。
とくに怖いのは、各階にある在庫の倉庫。
ドアを開けて中をのぞき、不審人物がいるかどうか、歩きまわって確認しなければなりません。
SF、オカルト映画などで凶暴なエイリアンなどが潜みやすい、まさにその場所。
たいていのエキストラ俳優は、ドアを開けて間抜けな顔でうろつきまわるうちに、物陰から出てきた生命体にグサッと噛み殺されてしまうのです。
この在庫の倉庫の見まわりに関して、ある先輩が新人の私にある知恵を授けました。
「ドアを開けたら、『おい、そこのお前』って声かけるんだよ。ほんとうにそこに誰かがいたら、人間の心理として、『えっ?』って立ちあがるから」
真偽のほどはともかく、怖がりな私はそれを信じて毎日、実行したのです。そんなある日、私に最初の試練が待ち受けていました。
「おい、そこのお前」
いつものようにドアをあけて声をかけたとたん、暗がりからすっとなにかが立ちあがったのです。続きはまた次回!