ガードマンの恐怖タイム
新人の私に先輩が言いました。
「お前、今日6階で寝ろよ。あそこ、長椅子があっていいぞ」
私「またなにか、へんなことたくらんでるんじゃないでしょうね?」
先輩「やだなあ、そんなはずないだろ」
彼は笑ったものの、妙な言葉をつけたしました。
「2時を楽しみにしてろよ」
私「なんですか? お化けとかやめてくださいよ」
先輩「そんなのじゃないよ。お楽しみだよ、へへへ」
その晩、私は先輩のすすめにしたがって、6階の長椅子に横になりました。そして、いつのまにか、眠りに落ちたのです。するとー。
リリリリリ! ビビビビビ! ジリジリジリ!
突然、けたたましい物音が6階のフロアに鳴り響いて、私は飛び起きました。
「火事?! 侵入者?!」
このフロアにいたらどうする?とっさに懐中電灯をつけて警棒を持ち、あたりを警戒。
すると、だんだん様子がおかしいのに気づきました。
音はどうやら、このフロアの中で鳴っているらしいのです。しかも、ある一角のほうから聞こえます。
近づいて暗闇に懐中電灯の光を向けて、目を凝らした私。
フロアの時計店に置かれた、数十個の目覚し時計が一斉に鳴り響いていました。
時間は午前2時。
「あいつ……」
そのとき、警備室では「先輩」がネズミランプを見ながら悪魔の笑みを浮かべていました。
私がフロアぜんぶの目覚し時計のスイッチを切ってまわる様子が、逐一、ランプの点滅で表示されていました。
その後、私が新人ガードマンに同様の試みを行ったのは言うまでもありません。