こがわどんの日記

こがわどんの日記です。

びっくりしないでくださいねと言われて…

昔、仕事でお世話になった人から、ある年に年賀状がとどきました。そこにはこんな一文がありました。


「仕事や家庭のストレスで毛が抜けました。もう髪の毛がスカスカでおじいちゃんみたいです。お会いしたときにびっくりしないでくださいね(笑)」


いろいろ噂では聞いていたけれど……。でも、なかなか再会する機会がないまま、ずっと数年間もきてしまいました。


その人はたしかにストレスを受けやすい、真面目な人です。でも、ふだんは明るくて前向きな人なので、人に好かれるタイプだと思います。

 

それだけに、ちょっと気の毒だなあと。髪が薄くなってしまったいま、どうやって接したらいいのだろうと迷います。


励ましてほしいと頼まれてはいません。でも、年賀状の感じではちょっと落ち込んでいるニュアンスも読み取れるので、微妙です。


やっぱり、励ますのか、励まさないのかは、会ったときの会話の流れで考えるしかありませんね。せめて、年賀状をいただいた直後に会っていれば、

 

「ああ、やっぱり年賀状のとおりだったんですね。(髪の毛がスカスカになったのも)いろいろ事情がおありだったようで……」

 

なんて、最後はモゴモゴした感じながら、なんとか会話ができたと思うんですけど、ちょっと時間があくと妙な感覚になってきます。


もしかしたら、微妙に復活しているかもしれない。もっと悪化しているかも。

 

頭部をなにかで覆うという完全武装状態になっていたら、「あっ!」というショックは倍増です。そんな心理から、会った瞬間はたぶん、凝視してしまうでしょう。

 

いやいや、ネガティブに考えないようにしましょう。


髪の毛が薄い人は「ほかの人が頭を見ないで会話や対応をしてくれるのが、いちばん精神的にラクだ」と聞いたことがあります。


なるべく上を見ないようにして、さりげない会話(笑)。

 

そのひとがもし、自分から薄毛を改善したいという意思を示してくれたら、うれしいですね。

 

とりあえず、薄毛にいい栄養とか食事の知識を「彼氏 はげそう 料理」で検索したサイトで調べておきました。

 

私も抜け毛が多くなってきたことですし、改善しなければいけません。

 

さりげない会話のきっかけになるといいな~。

 

 

 

ガードマンの恐怖タイム

新人の私に先輩が言いました。

「お前、今日6階で寝ろよ。あそこ、長椅子があっていいぞ」


「またなにか、へんなことたくらんでるんじゃないでしょうね?」

先輩「やだなあ、そんなはずないだろ」

 

彼は笑ったものの、妙な言葉をつけたしました。

「2時を楽しみにしてろよ」

 

「なんですか? お化けとかやめてくださいよ」

先輩「そんなのじゃないよ。お楽しみだよ、へへへ」


その晩、は先輩のすすめにしたがって、6階の長椅子に横になりました。そして、いつのまにか、眠りに落ちたのです。するとー。


リリリリリ! ビビビビビ! ジリジリジリ!


突然、けたたましい物音が6階のフロアに鳴り響いて、は飛び起きました。


「火事?! 侵入者?!」

 

このフロアにいたらどうする?とっさに懐中電灯をつけて警棒を持ち、あたりを警戒。

 

すると、だんだん様子がおかしいのに気づきました。

 

音はどうやら、このフロアの中で鳴っているらしいのです。しかも、ある一角のほうから聞こえます。


近づいて暗闇に懐中電灯の光を向けて、目を凝らした


フロアの時計店に置かれた、数十個の目覚し時計が一斉に鳴り響いていました。


時間は午前2時。


「あいつ……」


そのとき、警備室では「先輩」がネズミランプを見ながら悪魔の笑みを浮かべていました。


がフロアぜんぶの目覚し時計のスイッチを切ってまわる様子が、逐一、ランプの点滅で表示されていました。


その後、が新人ガードマンに同様の試みを行ったのは言うまでもありません。

 

 

 

ガードマンの試練

前回の続きです。暗がりからすっとなにかが立ちあがりました。

 

「あっ!」

 

いよいよ、泥棒がまぎれこんだとは……。でも、人間というのはこんなとき、驚いて腰を抜かすばかりでなんにもできません。


すると、暗がりから姿を現したのは、私にその技を教えた先輩でした。


「へへへ、本当にやってるのかどうか、確認してみたかったんだよ」


あんた、なにやってるんだよ!彼は真夜中の暗い倉庫に先回りして、数十分も息をこらし、私を待ちつづけていたのでした。

 

この男の無邪気な性格は、このあと私をさらなる恐怖に突き落とします。


いまはいたるところにカメラがありますが、当時はそんなものはありませんでした。


そのかわり、警備室には赤外線探知器によって、夜間のフロアをうろつく人間を探知できるシステムがありました。


人間がどこを通って、どのように移動しているかが、警備室にいながら光の点滅でキャッチできます。


しかし、ときどきネズミが走りまわって点滅させるのでろくに役に立たず、通称「ネズミランプ」と呼ばれていました。

 

そして、深夜。交代で睡眠をとるガードマンは、用意された部屋で寝なければいけないのですが、長椅子のある展示コーナーでこっそり寝ることもありました。


すると、またしても新人の私にさきほどの先輩が言ったのです。次回、完結します。

 

 

 

ガードマンはいつもひとり

もうずっとむかしのお話です。当時、私はある百貨店で夜間常駐警備のアルバイトをしていました。

電気が消えた店内を懐中電灯を持って、3人組(だったかな)で「おまえはA階段、おまえはB階段」というように、一定の時間ごとに手分けして巡回するのです。


とくに怖いのは、各階にある在庫の倉庫。


ドアを開けて中をのぞき、不審人物がいるかどうか、歩きまわって確認しなければなりません。

SF、オカルト映画などで凶暴なエイリアンなどが潜みやすい、まさにその場所。


たいていのエキストラ俳優は、ドアを開けて間抜けな顔でうろつきまわるうちに、物陰から出てきた生命体にグサッと噛み殺されてしまうのです。


この在庫の倉庫の見まわりに関して、ある先輩が新人の私にある知恵を授けました。


「ドアを開けたら、『おい、そこのお前』って声かけるんだよ。ほんとうにそこに誰かがいたら、人間の心理として、『えっ?』って立ちあがるから」


真偽のほどはともかく、怖がりな私はそれを信じて毎日、実行したのです。そんなある日、私に最初の試練が待ち受けていました。


「おい、そこのお前」


いつものようにドアをあけて声をかけたとたん、暗がりからすっとなにかが立ちあがったのです。続きはまた次回!

 

 

かき揚げへの葛藤

お客さんに声をかけるために、いつもしているマスクをたまたまはずしたその瞬間。かき揚げに向かって、くしゃみをしてしまった店員のおばちゃん。

 

私、凍りついて、立ちすくみました。さまざまな考えが頭の中を駆けめぐります。

 

かき揚げはプラスチックの透明パックに入っているとはいえ、上のほうがちょっとだけすきまが空いています。


なんかそこから、おばちゃんのくしゃみがミスト状になって入ったような気がします……。

 

明日、てんぷらそばにして食べようと思っていたんで、いちおう火は通すつもりだったけど……。


いや、火を通すんだからいいじゃない。そもそも入ったかどうかだって、わからないんだし、なんといったって値引きのかき揚げなんだから。


いや、でもきたない気がする。そんな気持ちが頭の中で闘いはじめたのです。


で、結局、私は長く待ち望んだ、値引きのかき揚げをあきらめました。そして、風邪気味のおばちゃんと、その事実を知らずに買うと思われる、ほかのお客さんの健康を祈りました。


私も配送センターの冷蔵庫に入ってバイトをした経験があります。寒いところで働く人のなかには1年中風邪が治らないとぼやいてる人もいました。


だから、おばちゃんを責める気は毛頭ないのです。


その後、こりずに、この時間帯をねらってたびたび訪れている私。


おばちゃんに顔を覚えられてしまったようで、顔を合わせるたび、おばちゃんはマスクの下から、ニヤリと笑いかけてきます。

 

見てみぬふりをしてくれてありがとう、と言っているようで……。

 

 

 

かき揚げの悲劇

夜8時を過ぎた、あるスーパーでの出来事です。

 

だんだんお客さんも少なくなりつつあるとはいえ、会社帰りのサラリーマンがお腹をすかせてお弁当売り場をウロウロしています。

 

「いらっしゃいませー! 50%引きですよー! どうぞどうぞ!」

 

お総菜コーナーにおいて、おばちゃん(白衣の店員)がまわりのお客さんに声をかけながら、お総菜に値引きのシールを貼りはじめました。

 

しめしめ……。いあわせた私はこのスーパーではこのくらいの時間になれば、50%引きになることは知っていました。

 

もちろん、20、30%引きになるのも熟知しています。だから10%引きには興味はないのです(断言)。

 

この日は50%引き狙いです。ちょっと早くスーパーに着いてしまい、わずか数十円しか値引きにならないのに、買う気もないほかのコーナーにまわりました。

 

熟考してなにかを買うような素振りをしながら時間をつぶします。そして、50%引きになるのを待ったのです。おばちゃんの声が高らかに響きました。

 

「はーい、50%引きですよ!」

 

駆けつける私。そのときです。

 

「ヘクシッ!」

 

なんと、おばちゃんがならべていたかき揚げに向かって、くしゃみをしてしまったのです。

 

しかも、お客さんに声をかけるために、いつもしているマスクをたまたまはずしたその瞬間に……。